無添加ライフ

有機農業

有機農業(ゆうきのうぎょう、Organic farming、Organic agriculture)とは、輪作、緑肥、堆肥、微生物疾病制御といった手法を利用して、土壌生産効率を維持し、病気を回避する、農業の方法である。有機農法有機栽培、オーガニック農法などとも呼ばれる。

注目トピック

概説

20世紀の農業は、人工的に化学合成された化学肥料や化学合成農薬などの化学物質を様々な目的で使用することを進めることでその生産力を大きく拡大させた。

日本では、1961年に農業基本法が制定され、化学肥料や化学合成農薬の使用、作業の機械化が大きく推進されてきた。これらは農地の単位面積あたりの収穫量の増大に効果があるので、小面積の農地しか持たない多くの農家にとって朗報であり、積極的に導入が進められた。

しかし、長年に渡って化学肥料ばかりを使い続けると、自然の生態系に悪影響があることが次第に解ってくる。土の中の菌類、バクテリアなどの生物は、本来は落ち葉や腐った木、糞尿などの有機物を分解して生きている。しかし、これらの有機肥料の代わりに無機質の化学肥料ばかりを大量に使用し続けると、有機物が不足しはじめ、土の中の微生物が減少する。やがて、無機質を好む嫌気性生物の細菌が土中に繁殖しやすくなる[要出典]。その結果、植物は病気にかかりやすくなり、対処のために農薬の使用を増やさざるをえなくなり、ますます環境を悪化させる…という悪循環に陥ってしまうようになった。

そのような反省から、提唱されたのが有機農業である。化学物質の利用をやめ、旧来のような天然の有機物や天然由来の無機物による肥料などを用いるなど、自然のしくみに逆らわない農業を目指している。農作物の収穫量よりも、土の中までをも含む生態系全体の健全性に重きを置いている。

一方、後述のように有機農業の単位面積当たりの収量が低いため、慣行農法と同様の収量を得るためにはより多くの農地を必要とする。農地自体が人為的なものであり、慣行農法によって高収量で農地を少なくする方がより生態系保護や環境保全に利するという観点も存在する。このように生態系保護や環境保全という観点からだけでも、有機農業に対する評価は多様である。

また、熟成が不十分な有機質肥料は、寄生虫汚染や病原微生物汚染の原因になる。そのため、十分に熟成させた堆肥を利用する必要がある。そのため、かつて、有機質肥料を用いず,化学肥料のみを用いて栽培した野菜を「清浄野菜」と称して尊重したこともあった。また、堆肥の熟成が不十分な場合、ガス障害や高いC/Nによる窒素飢餓が生じる恐れもある。

有機農業というアプローチは共通の到達点と実践を共有しているが、その手法は様々である。 合成化学肥料を使用しないかあるいは厳しく制限する。あるいは土壌を浸食や貧栄養化、物理的な崩壊から保護することや、生物多様性の保全(例えば、一品種を栽培するのではなく、多品種を栽培するなど)、家畜類を屋外で飼育すること(平飼い)が含まれる。これらの枠組みの中で、個々の農業者はそれぞれ自分自身の有機生産システムを発展させる。そういった個々の有機農業のあり方は気候や市況、地域的な農業の基準によって規定されている。

広義には、有機農業は無農薬または低農薬農法までを含む。農薬による薬害や公害も次第に明らかになり、70年代にもDDTなどの毒性の強い農薬が規制されてきた。これらの農薬には分解されにくいものがあり、環境や人体への蓄積も懸念される。また本来の生態系を破壊することで、新たな害虫の発生や天敵による害虫抑止力の喪失などの弊害を招くことも明らかとなった。この反省から、有機肥料とともに無農薬または低農薬農法を実践する農家がある。

一方、無農薬や低農薬農法を用いた結果、病害虫防除が不十分だと病害虫に抵抗するために植物自体が作る天然化学物質の方が残留農薬などよりも遙かに毒性が強いという報告が、突然変異原性の検出法エームズ試験の開発で有名なエームズ博士らによって出されている。

有機栽培は慣行栽培に比べ、統計的に単位面積あたりの収量が低い傾向がある。 現在の高度な栽培方法が導入される明治中期までの反収(1反=300坪=10 a辺り)は奈良律令制時代の100 kgからさほど伸びずせいぜい200 kg(1石3斗)程度。これが純粋な伝統的有機栽培での収量と思われる。

有機肥料の多くは農産廃棄物、畜産廃棄物、林産廃棄物などの産業廃棄物を熟成させたものであり、ゴミの減量や物質循環という意味でも有意義である。 原種から食感の向上、収量の増大などを目的として人の手による改良を経た作物は、原種とは異なる性質を備える。異なる性質の中には肥料への要求成分・分量の変化も含まれる。

有機肥料は窒素に関しては緩効性肥料として作用するため、肥効を短時間でコントロールするような栽培法には速効性窒素肥料に比べて不向きであり、栽培にも習熟が必要とされる。さらに、窒素肥料という観点からしても、温度や水分含量によって微生物による有機肥料の分解速度が異なり、制御が困難である。

科学用語としての有機は、有機化合物のことを示す。これは当初主流だった化学肥料が無機質だったことと対照的に、伝統的な肥料の多くが有機質だったことから、象徴的に有機という単語が用いられた。したがって有機農業を省略して有機としてしまうと、科学的な意味が通じなくなる場合があるので注意が必要である。例:「有機農業で栽培された食品」を「有機食品」と略すと意味が通じない。食品の大半は有機質であることから。

関連法令

2000年1月、日本農林規格(JAS規格)に、コーデックス委員会に準拠した「有機JAS」の規格ができた。 認証されるのは、遺伝子組み換えされておらず、基本的に化学合成された農薬や肥料を避けられた食品である。ただし、緊急の際に特定農薬や、許可された天然に存在する物質に由来する農薬が使用されることがある。その他、平成21年8月27日の改正により、遺伝子組み換え作物に由来する堆肥の使用は当分の間、許可されることとなった(「有機JAS規格」の小節において後述)。

2002年12月、農薬取締法に特定農薬指定制度ができた。特定農薬は、安全性の明らかなものと定義されている。通称「特定防除資材」と呼ばれる。しかし、定義が安全性の明らかなものとされているのに農薬という呼称をつけるのはどうかとの批判がある。

2006年12月、「有機農業の推進に関する法律」が制定・施行された。 またそれを受け、2007年4月には「有機農業の推進に関する基本的な方針」が公表された。 これにより、日本の法制度のもとでは規制の対象としか見られてこなかった有機農業が、法律によって推進されることとなった。

内容

有機農業者は、土壌の生産性と耕地を維持し、植物へ栄養分を供給し、雑草・害虫・病気などを抑えるために、できる限り、輪作したり、作物の残余物・動物性肥料を利用したりしている。 その土地や気候環境に強い植物や植物の種を選ぶことでも肥料や農薬の使用を抑えることができる。

有機JAS規格

有機JAS規格では、以下のような天然に存在する物質の使用が許可されている。

有機肥料の他に様々な無機肥料が認められる。それらは、草木灰、炭酸カルシウム(苦土炭酸カルシウムを含む。)、塩化加里、硫酸加里、硫酸加里苦土、天然りん鉱石、硫酸苦土、水酸化苦土、石こう、硫黄、生石灰(苦土生石灰を含む。)、消石灰、微量要素(マンガン、ほう素、鉄、銅、亜鉛、モリブデン及び塩素)、岩石を粉砕したもの、塩基性スラグ、鉱さいけい酸質肥料、よう成りん肥、塩化ナトリウム、リン酸アルミニウムカルシウム、塩化カルシウム、などであり、有機肥料しか有機農業に用いられていないということは誤解である。

使用条件のついているものもあるが、使用可能な農薬は、除虫菊乳剤及びピレトリン乳剤、なたね油乳剤、マシン油エアゾル、マシン油乳剤、大豆レシチン・マシン油乳デンプン水和剤、脂肪酸グリセリド乳剤、メタアルデヒド粒剤、硫黄くん煙剤、硫黄粉剤、硫黄・銅水和剤、水和硫黄剤、硫黄・大豆レシチン水和剤、石灰硫黄合剤、シイタケ菌糸体抽出物液剤、炭酸水素ナトリウム水溶剤及び重曹、炭酸水素ナトリウム・銅水和剤、銅水和剤、銅粉剤、硫酸銅、生石灰、天敵等生物農薬、性フェロモン剤、クロレラ抽出物液剤、混合生薬抽出物液剤、ワックス水和剤、展着剤、二酸化炭素剤、ケイソウ土粉剤、食酢の30種類である。

その他、有機JAS規格によれば、本来は種苗や防除資材や肥料などに組換えDNA技術を用いたものを利用できない。しかし、附則(平成18年10月27日農林水産省告示第1463号)により、特例として遺伝子組換え作物に由来する有機質肥料である堆肥を有機栽培に用いることが許可された(遺伝子組み換え作物の「遺伝子組換え作物と有機栽培」の節を参照)。

特定非営利活動法人・日本有機農業研究会は、「有機農業の目指すもの」として、下記の項目を挙げている。

  • 安全で質のよい食べ物の生産
  • 環境を守る
  • 自然との共生
  • 地域自給と循環
  • 地力の維持培養
  • 生物の多様性を守る
  • 健全な飼養環境の保障
  • 人権と公正な労働の保障
  • 生産者と消費者の提携
  • 農の価値を広め、生命尊重の社会を築く

同会は「有機農産物の定義」として、「有機農産物とは、生産から消費までの過程を通じて化学肥料・農薬等の合成化学物質や生物薬剤、放射性物質、遺伝子組換え種子及び生産物等をまったく使用せず、その地域の資源をできるだけ活用し、自然が本来有する生産力を尊重した方法で生産されたものをいう」と定めている。

お気に入り

会社設立なら!会社設立 費用新設法人設立をお考えの方向けの情報

Copyright (C) 2012 無添加ライフ All Rights Reserved.